映画『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』感想

クリエーターの本気を見た!!!

「完全にかまされた!」それが映画『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』を見終わった感想です。ハッキリ言って、アニメ版『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』を見ていない人には、苦しいでしょう。

初見の人をかなり置き去りにした作り、そしてコレまでとは違って「現象」がなに1つ起きないあたり、完全に冬に公開する『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』の「前フリ」としか思えません。

もちろん、前作の「ここ解決できてないよね」を、スッキリさせた映画ではあります。しかし、全然それだけではないでしょう。

ここまで潔く「フリ」として1作を使える「根性」というか「クリエイター魂」を感じました。本作に、ネタバレもクソもないので、ガッツリと感想を書こうと思います。いや、それでも控えめに書きます。全解説すると、途方もない文量になりますので。

本作の魅力は、完全に「メンタル疾患」を題材にしているのに、そういった言葉を一切に使わない点が素晴らしいのです。つまり「描かれていない点」が圧倒的に多い。しかし、その「潔さ」が、世の中の「残酷さ」や「厳しさ」を描いているとも言えます。

本作においては、「学生」が主人公なのにも関わらず、ほぼ「両親」が描かれません。ちなみに、前作からも確執があった親子関係は解決しないまま、完全に描かれなくなっています。

親であろうと、所詮は「他人」でしかない。そして、自分らしく生きるために障害となるなら、切り捨てていい。そうしたメッセージを感じざるを得ません。また、主人公の母親は、心神喪失状態ですが、その解決もなされません。メンタル疾患になってしまえば、治らないこともある。そうした「残酷な答え」が描かれているようにも思えるのです。

主人公たちは学校に通っていますが、大多数の学生たちは、両親と同様に存在がかなり希薄です。つまり、彼らは「心の葛藤」も持たずに、ただ言われたことを鵜呑みにして、何も疑わず、他人の言いなりや「同調圧力」に従って生きているだけの傀儡にすぎないのです。本作の言葉で表すなら「空気だけを読んで生きている人間」です。

そうした人間が9割9部の世の中で、心の葛藤と闘い、その空気に流されず、自分らしく生きたいと突き進んでいく主人公を軸にした人間関係が素晴らしいのです。

ちなみに、今作のテーマは確実に「ゼロヒャク思考」でしょう。主人公「咲太」の妹、「花楓」は、過去のイジメにより「解離性障害」を引き起こし、やっと「解離性障害」から立ち直ったところ。

現在は、まだまだメンタル的に不安定で、どう見ても社会不安障害です。なので、常に「ゼロヒャク思考」に囚われています。好きなのは「過去の自分」か「今の自分」か。そもそも「好き」なのか「嫌い」なのか。進学先は「全日制」なのか「定時制」なのか。

そのアンサーに「どちらの自分も好き」「好きでも嫌いでもなく普通」などの選択肢があることを本作は示しています。

そうした解答を連発するのが、主人公の咲太です。メンタルに詳しくない人が見れば「達観しきった学生」としか思わないかもしれませんが、私からは「精神科医」や「アドラーの申し子」くらいに見えます(笑)それくらい作者はメンタルに精通しているのでしょう。

また、ゼロヒャク思考を生み出した原因「同調圧力(ストレス)」から逃れ、「自分らしくあること」「ありのままの自分を受け入れること」の大切さを本作は教えてくれます。

逆に言えば、自分を受け入れられないだけで、どれだけ恐ろしいことが起こるのかを暗に示しているのです。自分の生き方を受け入れるということは、他人の生き方も受け入れるということ。つまり、前者ができないと後者もできない。だから、狭く偏った考え方になり、どんどんメンタルを悪くしてします。その残酷さが、本作の描かれない部分にあります。

それ以外にもあらゆる視点で、本作は見ることができますので、多くの人が共感できる作品ではないかなと思います。しかし、普段から人間関係について、深く考えたこともない人にはまったく理解できない作品ですので、絶対にオススメしません。

逆に、心理学や精神医学に興味のある人や、心の悩みを持つ人や、メンタル疾患の人には、ぜひとも見ていただきたい作品です。

まずは、アニメ版『『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』と前作『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』を「dアニメストア」で見てみてください。とにかく泣けます。アニメから映画を連続で見た私は、嗚咽が漏れるほど泣きました。ぜひ。

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P.S.熊本旅行のときのワンピース缶バッチに引き続き「最高の引き」をしました。親友も私も好きな推し(双葉)を引き当てて大満足です。とはいえ、狙っていたグッズ(かえでの日記帳)が、すでに売り切れていたので、今後も映画館を探そうと思います。『青ブタ』のせいで「ミニマリスト」卒業しそう(笑)