3Dデジタルリマスター版を、劇場で観てきました。観た劇場が悪かったのか、映像がブレまくりでした。しかし、それでも「3時間15分」が、あっという間に感じるほどの素晴らしい作品に脱帽です。
『タイタニック』が公開されたのは1997年。私が3歳の頃ですから、もちろん観たことはありませんでした。この作品の素晴らしいところは、結末がわかった状態でストーリーが進む点です。
つまり、ヒロインのローズに巻き起こる悲劇にのみ焦点が当てられるのです。
劇的な展開は一切ありません。ゆったりとした雰囲気でありながら、あっという間に進んでいくのです。俳優陣の演技力もさることながら、心地よく切り替わるシーン、沈みゆくタイタニック号のリアルな迫力、映像とマッチした楽指団の演奏、どれをとっても素晴らしい。
エンディングの静かになった場面では、観客の咽び泣く声が劇場内に響きます。それも映像作品の一部のように感じました。
ローズが、いつも持ち歩く写真。そこにはローズしか写っていませんでしたが、どれもがジャックとの思い出なのだと気づき、彼女が生涯を通して、ジャックとともに過ごしたのだと知ったときには、ホロッときました。
そこまでの私は正直、「吊り橋効果」によって勘違いした若者ふたりが、自分たちの感情に酔っているだけのようにも感じていました。とくにローズからすれば、ジャックは自分の願望を叶えてくれる都合のいい男なわけです。貴族であり絶世の美女のローズになら、どんな男も好意を抱いて当然です。
なので、タイタニック号のうえで起こった出来事だけを切り取って観ても、感動はできませんでした。しかし、悲劇から生き延びたローズは、ジャックの姓である「ドーソン」を名乗り、ジャックと語った「やりたいこと」を1つ1つ実現し、ジャック亡きあとに彼との思い出を作ったのです。
そして、人生の最後には、彼のそばで息を引き取りました。
以前から、「運命の人」とは、死ぬ最後の瞬間になるまでわからないと、私は考えていました。なので、ここに強く共感したのです。
多くの人は、出会った瞬間に「運命の人」なのかどうかを判断したがりますが、私は真逆の考え方です。死ぬ瞬間に隣りにいた人が「運命の人」なのです。最後までそばで寄り添っていてくれた人こそが「運命の人」足り得るのです。
つまり、映画『タイタニック』で描かれるのは、安っぽいラブストーリーではありません。ローズの深い愛情。すべてを包み込む母性。そして、女性の強さを描いた素晴らしい作品なのです。
とても満足でした!