私は少し変わった職業をしています。マジシャンという職業です。
職業柄、人の思い込みを利用して不思議な現象を起こします。
そこで手に取ったのが『Think Smart』(ロルフ・ドベリ 著、サンマーク出版)です。
航空会社で最高財務責任者を務め
経営学と哲学の博士号も持つ著者が
間違った思い込みを避けて賢く生きていく思考法を52個も解説している。
賢いとは、なにか?
著者は誰もが知る3人の賢者を例に挙げて
「賢さ」とは何かを説いています。
ローマ皇帝はミケランジェロに尋ねた。「あなたの才能の秘密を教えていただけないでしょうか? あなたはどのようにしてダビデ像をつくりあげたのですかーこの傑作中の傑作を」ミケランジェロはこう答えた。「とても簡単です。ダビデではないものを。すべて排除したのです」
「はじめに」より
伝説の投資家、ウォーレン・バフェットは、自分自身とビジネスパートナーのチャーリー・マンガーについてこんなふうに書いている「私たちは、ビジネスにおける難問の解決法を学んだわけではない。学んだのは、難問は避けたほうがいいということだ」
「はじめに」より
ミケランジェロより以前、アリストテレスもこう言っている。「賢人が目指すべきは、幸福を手に入れることではなく、不幸を避けることだ」
「はじめに」より
歴史的賢人から現代の大富豪までもが失敗を避けることが成功への道だと言っています。
本書を読んで、そんな賢人たちの仲間入りをしたいですね。
カチッサー効果とは?
行動に「理由を添えるだけ」で、その行動は周りからの理解と譲歩を得やすくなる。驚くべきことに、その理由が意味をなしているかどうかは重要ではない。「〇〇なので」というだかえで、その行動が正当化されるのだ。
マジシャンとして、とても納得してしまいました。
実はマジシャンは行動のひとつひとつに理由をつけて
観客に疑念を抱かれないような工夫をしています。
つまり、騙されてしまうほどの盲点を作り出してしまう
強力な心理効果だと言えるでしょう。
カチッサー効果に流されて無思考に
判断をしてしまい失敗をする事態は避けたいですね。
初頭効果と親近効果とは?
あなたにふたりの男性を紹介しよう。アランとべんだ。(中略)アランは知的で、勤勉で、衝動的で、批判的で、頑固で、嫉妬深い。ベンは嫉妬深くて、頑固で、批判的で、衝動的で、勤勉で、知的だ。いっしょにエレベーターに閉じ込められるなら、どちらのほうがいいだろう?
アランと答えた人が多いんのではないでしょうか?
ふたりの性格描写はまったく同じです。
脳は「うしろのほうに並んだ形容詞」よりも、「はじめのほうに並んだ形容詞」に重きを置く
たいていの人は「第一印象が大事」と教わったことがあると思います。
私自身もそれを利用しています。
マジシャンの衣装に「黒いスーツ」のイメージを持つ人は多いですよね。
それは第一印象でお客様に「権威性」を感じてもらう
マジシャンなりの工夫なのです。
これから起こる不思議な現象の説得力が上がるわけですね。
ただし、ものごとに影響をおよぼすのは「初頭効果」だけではない。逆方向に作用する「親近効果」と呼ばれるものもある。あとから入ってきた情報のほうが記憶に残りやすいという現象
時間が経ってくると、初頭効果より親近効果のほうが強くなってくるそうです。
お客様に感想を聞くと
「最後のあのマジックがスゴかった!」
と言われることが多いことにも納得がいきます。
ものごとを「最初だけ」あるいは「最後だけ」の印象で判断してしまうと
失敗をしやすいと言えるでしょう。
途中で受ける印象にも目を向けて
正確な判断ができるようになりたいですね。
本書をどう活かすのか?
結論。重要な知識は実践を通して得られるもの。書かれた文字に畏敬の念を抱くのはやめたほうがいい。さあ、読書はこのくらいにして、あなたも本当に自分のためになる何かを始めよう。
「知識は自分の体験を通してしか実際に作用するかは分からない」
ということを示唆していると思います。
私自身、そのような体験を数多くしてきました。
マジックの本で得る知識は、にわかに信じ難いものばかりです。
実際に使ってみるまでは本当にその通りになるか分からないのです。
『Think Smart』(ロルフ・ドベリ 著、サンマーク出版)の著者ロルフ・ドベリは52ある章の最後に「アウトプットの重要性」を説きました。
失敗を避けるための知識を身に着けようという命題で書かれている本書で
最後にアウトプットの重要性を説くことに、とても感動しました。
近年のアウトプットブームの火付け役となった
精神科医で作家の樺沢紫苑先生も自身のYouTubeチャンネルで
「インプットは自己満足、アウトプットは自己成長」
と述べています。
転ばぬ先の杖である本書を読んだら過去の賢人たちに倣って
行動をすることでその価値を最大限に活かしていきたいですね。