以前は「書評家」という職業に憧れがありました。そこで調べてみると、すぐに出てきたのが、印南さんです。印南さんの印象は、ウェブメディア「ライフハッカー」でたくさん見たときには、「仕事人」「感情が見えない」「要不要がハッキリしている」というものでした。
しかし、本書では「ポエティック」「ロマンチスト」「感性の豊かな人」と真逆とも言える印象に変わりました。
つまりは、印南さんは媒体によって、文章を変えているのです。印南さんは元音楽ライターであり「DJイベント」も主催されるようで、つくづくパフォーマーなのだなと感じました。
そして、本書のなかで最も響いた言葉は『「たくさんの本を読む」プロセスそのものを楽しめるようになっていただきたい』というもの。
たしかに、多くの人の読書に対する苦手意識は「せっかくお金を払って買ったのだから、何かを得られなければ意味がない」とか「勉強したほうがいいのはわかっているけど、自分は頭が悪いから」とか、なんだか読書を堅苦しく捉えすぎている感じがします。
私が読書を好きな理由は「カッコいいから」です(笑)
脳科学者の茂木健一郎さんが著書で「読書ってカッコいいよね」と言っていて、大変共感したのを覚えています。本を読まない自分よりも本を読む自分のほうが、なんだかカッコいいじゃないですか。魅力的に思えるんです。
だから、本を読む。読書って、そんなものなんじゃないかなと思うんです。
もちろん、その延長線上に「よい結果」が得られると嬉しいですが、それは前提ではないんですよね。
たとえば、本書では「自分の中にため込まない読書」をススめていて、息を吸ったら吐き出すように、本を読んだら自分の考えを書き出すことで、たくさんの本を読めると書かれています。
そこで「自分の考えを書き出すなんて堅苦しくないか?」と考えてしまう人は、おそらく「初めからプロのように素晴らしい文章を書かなければいけない」と無意識に思っているのではないでしょうか。
まじめな人ほど、完璧を求めてしまうので、結果として何も行動ができなくなってしまうのです。
そうではなく、今日あった楽しかったことを家族に話すように、仕事のグチを友だちに話すように、楽しみながら読んだ内容をSNSなどに書いてみる。それが当たり前になれば、共感してくれる人も増えて、より一層、読書が楽しくなるだろうなと思います。
私にとって、読書は「著者との対話」なのですが、印南さんの文章の変化を見て、人柄が垣間見えた気がして、おもしろかったです。