『行動最適化大全』(樺沢紫苑著/KADOKAWA)書評

書評

行動の最適化。振り返ってみると、私は人生において行動の最適化に重きを置いてきたと思う。例えば、私はプロのマジシャンとして活動をしてきたが、プロになる前はいつでもマジックの練習ができるように、家のそこら中にトランプを置いていたし、外に出かける時にはジャケットを羽織りポケットにはトランプが入っていた。もちろん、カバンにはその他のマジック道具も忍ばせていたりした。そうしたスキル習得の最適化においては、かなり工夫してきた。

さて、そうした行動の最適化を、生活習慣から仕事や人間関係にいたるまで網羅して解説された本『行動最適化大全』の感想について書いていく。

まず、驚いたのは本書の構成だ。

本書は「普段、本を読まない人が、自然と早くラクに楽しく読める本」と言えるだろう。なぜなら、パート1ではイラストによる解説。パート2で文章による詳細の解説。と分かれているからだ。パート1でイラストにより直感的な理解ができて、自分に必要と思えば、自然とパート2で詳細を確認するという作りになっている。

これは、読書家なら当たり前に行っている速読の方法「パラパラ読み」からの「細部の読み込み」が自然とできる構成だということだ。

これも、まさしく最適化ではないだろうか。読書法も最適化がなされていないと、せっかく読んだ内容が頭に入らない。そのため実践もできずに終わってしまうことが多い。それをさせない構成となっている本書は、買った人に損をさせない本とも言えると思う。また本書の最後にはチェックリストがついており、最適化できていない項目を簡単に確認することができるようにもなっている。なので、自分に不足した部分も一目瞭然となり、実践に移しやすい。

私がチェックリストをつけたところ、153個中106個の最適化がなされており、自分のやり方とは違う部分や自分の働き方に必要と思わない部分を省けば、ほぼ全て最適化がなされていた。ここからは私自身が上手くできているなと感じるところについて話したい。

まずは、朝の最適化。

私の場合は、起床後すぐに「EAA」というプロテインを取るようにしている。これは寝ている間に下がった血中アミノ酸濃度を一気に高めて、筋肉の合成を促すためのものだ。普段から理想の体型を求めて筋トレをしているので、そのための最適化と言える。これは本書で紹介されている「コップ1杯の水」としての狙いもある。起床後は体内の水分が不足しており、血液がドロドロになっているので、それを緩和する役割というわけだ。ちなみに、私は500mlくらいの水にEAAを15gほど溶かして飲むようにしている。さらに言えば、本書には「常温の水がよい」という記載があるが、私は数年前から浄水器を使うようにしていて、いつでも常温でキレイな水が飲めるように最適化をしている。

私が使用している浄水器「クリンスイ」

そうしたら、スグに1日の仕事を始める。起床後2~3時間の「脳のゴールデンタイム」を有効活用するためだ。その後、仕事が一段落したら朝食をとるようにしている。朝食は二十歳くらいのころから固定化している。バナナとヨーグルトが基本で、最近はリンゴやキウイを週に数回はさむようにしている。朝食で最も大切にしているのは、血糖値を急激に上げてしまわないことだ。つまり、低GI食品を選ぶことと満腹にしないことが大切だ。血糖値の大きな変動により、貴重な「脳のゴールデンタイム」に集中力を下げてしまわないようにするための最適化だ。そして、集中力という観点でいえば、バナナは集中力を司る脳内物質セロトニンの生成に必要な「トリプトファン、糖質、ビタミンB1」をまとめて摂取する役割も果たしている。朝食を取ることで体内時計のリセットを行う役割もあるので、ほぼ朝食は欠かすことなく取るようにしている。

そして、週に数回は起きたらスグに朝散歩に行くようにしている。私は朝散歩の最適化として住んでいる家の近くに緑の多い公園があることを条件にした。こうすることで、起きてスグに朝散歩に行こうという気持ちになるし、自然に触れることで本当に清々しい気分になれる。日頃の小さなストレスが、どうでもよくなる瞬間であり、心を洗浄できる場だ。行動や習慣から住む場所といった生活までをデザインする。それが行動の最適化だと思っている。

ここまで、『行動最適化大全』にも書かれている内容だが、今までの私が読んできた本を参考にして自分の習慣としているものだ。本書を読んで、自分は朝に関して、かなり最適化ができているなと思った。

また朝の最適化には、仕事に関する部分がある。

そこでは、朝一番にTODOの書き出しをするとあるのだが、私は夜に翌日のTODOを書き出すようにしている。それは、起きてスグに仕事に取り掛かることが多いことに加えて、切り替えが下手だからだ。頭の中でいつまでも仕事のことばかり考えてしまってメリハリをつけることが苦手なのだ。その切り替えのキッカケになるよう、夜にTODOを書き出している。ちなみに、私はそのほうがスッキリとして睡眠の質も高まる。こうして、自分に合わせてノウハウをカスタマイズしていくことも、最適化の1つだ。実際にやってみて上手くいかないなら、自分に合うようにデザインしていく。それが大切だと思った。

また本書には通勤に関する最適化も紹介されている。私が契約してるコワーキングスペースは家から自転車で10分かからない場所にあるので、朝のゴールデンタイムと昼食を終えると、気分転換に移動するようにしている。こうして、少しの運動と場所を変えるということで脳を刺激して、また仕事ができるように最適化している。さらに、今のコワーキングスペースを選んだ理由は、家から10分の距離であるだけでなく、近くにスポーツジムがあるからだ。昼からコワーキングスペースで仕事をして疲れたら、ジムへ行きリフレッシュして、また仕事をこなせるようにしている。これは本書で「集中力の最適化」として紹介されている内容だ。

すべて書き出すと大変なので、最適化できている部分はここまでにして、次は私の苦手な部分に関して書きたいと思う。「寝る前2時間の最適化」だ。

睡眠に関する本を読んで「カフェインの半減期は8時間以上」と見てからは、コーヒーの門限を14時までにしているし、お酒は週に1回飲むか飲まないかにしていて、飲んだ日も極力寝る前までに水をたくさん飲んで酔いを覚ますようにしている。また、就寝前の激しい運動は絶対に避けているし、スマホも見なければ、家にはテレビは置いていない。照明は「PHILIPSのHue」というものを使って、夜になれば暗くするようにしている。もちろん、カーテンは遮光カーテンだ。こうして、かなり最適化を行ってきた。

しかし、まだまだリラックスできていないと感じることが多い。先ほども書いたが、私は仕事をしていなくても仕事のことを考えてしまって、あまりリラックスできていないことが多いのだ。なので、本書の中で徹底したいのは、3行ポジティブ日記と読書だ。

以前、3行ポジティブ日記を書いていた時は、普段からポジティブになるのを実感していたし、毎日気分がよかったのだが、いつしかやめてしまっていた。なので、再開しようと思う。また記憶のゴールデンタイムの活用という意味でも、リラックスという意味でも趣味の読書を就寝前にしようと思う。最近は、昼間に集中して短時間で本を読むことが多かったが、これからはできるだけ夜のリラックスタイムとして読むように心がけようと思う。

本書を読んで、私自身かなり最適化にこだわっていることに気づいた。男は論理的で機能や効率にこだわる傾向が強いというが、まさしくそう通りだなと思った。また最適化というものを考えたときに「自身の行動傾向や習慣から、生活をデザインすること」が最適化であるという考えを自然と持っていたことにも気づけたのは大きかった。さらには、チェックリストがあることで自分の苦手な部分が浮き彫りになって、これからの課題が明確になったのもスゴく嬉しく感じた。また、幸福度の数値化では、セロトニン的幸福とオキシトシン的幸福が9点だったのに対して、ドーパミン的幸福は2点だった。日々ちいさな目標を設定してクリアしたり、資格勉強などをしたり、収入を高める努力をするなど、ドーパミン的幸福を高めることも大きな課題だと分かった。

実はまだまだ私の行っている最適化はたくさんある。物を減らすことや服装の統一、食器の統一、食事の作り置き、Amazon定期便の活用など、こだわりが尽きない。そうするなかで、今までの行動の振り返りができ、さらには、これからの自分と向き合うキッカケとなった本書。342ページもあるのだが、1500円で買えてしまうという恐ろしくお買い得な1冊だ。自身の生活習慣や仕事、プライベートの見直しをしたい人に、ぜひとも手にとってほしい素晴らしい著書だ。