『史上最強の哲学入門』飲茶/河出書房新社

書評

【私には学がない】
私は学校教育でロクに学ぼうとしなかった。
その理由は2つあって
1つは、『教師の言うことを疑いもせず聞き入れて「暗記だけ」していればいいという「いい子ちゃん」になることがたまらなく嫌だ』という間違った達観(わがまま)によるもの。もう1つは、『マジックとの出会い』による熱中によるもの。
なので、14歳の頃から学校教育を徐々に離れていった。高校に入る時には、マジックに没頭していたために、とにかく時間が惜しく感じ、一番近くにあるという理由だけで工業高校に入った。高校時代は、もちろんアルバイトとマジックだけに費やした。
それがどうだろうか?
今の私は学びに飢えている。「ただの暗記」だと思っていた勉強がこの上なく楽しい!
そして、今は哲学が網羅的に解説された本(『史上最強の哲学入門』)を手に心を躍らせている。
プロタゴラスの「相対主義」が生まれ
その弊害に立ち向かうように
ソクラテスが「無知の知」を説いたことで
真理を追い求めるようになった人々
そこから哲学を統一的な学問にするために
デカルトが「我思う、ゆえに我あり」という真理にたどり着き
哲学の第一原理を得た
そしてヒュームが得意の懐疑論により
複合概念を元として「イギリス経験論」を形成した
しかし、その2500年前のインドでは
ヒュームとよく似た哲学が
仏陀によって述べられていたという…
「(なんてドラマチックなんだ!もっと背景を詳しく知りたい!)」
そんな心の声と共に、知識欲が湧き上がる!
このようにして哲学の歴史を知り、人の思考の深さに触れて、自身の真理を手に入れたいと感化されている。
まだ53ページしか読んでいないのにも関わらず、こんなに楽しいなんて学びとは、なんて素晴らしいんだ!
さて、落ち着いて、少しだけ話を戻そう。
勉学は嫌いだが、賢く嫌味たらしかった14歳の君は、よく教師に異論を唱えて論破することで悦にいっていただろう。教えてあげよう。そんな君にピッタリの学問が哲学だよ。君がその素晴らしい学問に出会うのは12年も先なんだ。分かるかい?君がもう少しだけ賢く、自分を疑うことを知っていれば、こんな素晴らしい学問にも10年早く出会えていたかもしれないんだ。学びは自由だよ。何も学校に縛られることはない。知識は自身で選択して掴み取るものだ。現実から逃げることはない。現実という壁を乗り越えて、さらに上を行けばいいんだ。君ならできる。
そんな言葉をかけたところで、マジックの不思議に魅了されていた私は聞く耳を持たず、1組52枚のカードだけ持って、自分の「好き」に邁進していただろう。そして、今も変わらず「好き」な本を手に取って、脇に置いたカードの替わりにペンを片手に邁進している自分は、あの頃と全く変わっていない。