先日『具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ』を読みました。
私は「息を吸って吐く」ように「具体と抽象」を繰り返してきました。なので「共感」の連続で、本当に心が救われる1冊でした。
これまでの人生では、この「具体と抽象」を「上手くできない人」に、話を「1」から「10」まで説明するのが、ツラいと感じてきました。「具体的な話」と「抽象的な話」は、方向性が同じなのに理解されなかったりするからです。
例えば、私がプロマジシャンをしていたとき「情報発信が大切だ!」と勉強を始めました。そうすると、マジシャンの先輩には「何がしたいんだ?」「お前は頭デッカチだ」と言われたりしました。
「マジシャン(=マジックをする人)」という解像度でしか物事を見ていないと、そう感じるのは当然だと思います。一方で、私は「ビジネスマン」として物事を見ていただけの話です。方向性としては「マジシャンとして活躍する」という同じ話をしていたわけですね。
ですから、どちらも意見が行き違っているわけではなく、抽象度のレベルが合っていなかっただけなのです。
そうしたコミュニケーションの不和は、日常にも溢れています。
よくあるのが、男女関係で「男性が話を覚えていなくて、女性が機嫌を損ねてしまうパターン」です。女性の立場で、抽象度を上げて考えると【話を覚えていない=相手を大切にしていない】という無意識的な感覚が「怒り・寂しさ・悲しさ」の原因であることが分かります。
しかし、男性からすると【話を覚えていない=相手を大切にしていない】という図式が成立しないため、なぜ女性が不機嫌なのか分からなかったりするのです。
こうした「具体と抽象」への理解が高まると、あらゆるコミュニケーション不全が改善されていき、より高い次元で議論ができるようになります。
【抽象化を制するものは思考を制す】と本書にあるように、「具体と抽象」のテクニックは「原理」ですから、全てのことに応用が可能です。
高い抽象度でいえば「人間関係」に役立ちします。具体的には「恋愛」や「職場」の関係で役立ちます。さらに具体的にすれば「夫婦」や「上司部下」の関係でも役立つでしょう。
本書には、こうも書かれています。【「不連続な変革期」には抽象度の高いレベルの話が求められ、【連続的な安定期】には逆に、具体性の高い議論が必要になります。】
これは、ビジネスおける話です。
上記した、私のプロマジシャン時代の話は、コロナ禍による「不連続な変革期」に「具体と抽象」のテクニックが役立った好例だと言えるでしょう。
もし、私が「マジシャン」という具体レベルでしか物事を考えていなかったら、今頃は職を失っていたでしょう。しかし、「マジシャン」としてだけでなく「ビジネスマン」として「自己投資」をしていたおかげで、いまの「動画編集」という仕事があるのです。
本書は、私にとって「共感」の連続であり、より深めるための1冊となりました。普段から「具体と抽象」を意識されていない人にとっては、「世界の見え方が変わる」そんな1冊になると思います。
ぜひ、手にとって、自身の思考に起こる変化を楽しまれてください。