概日リズム睡眠障害を抱える女性がテーマだ。
主人公は、夜のダイナーで男性と出会い、交際を始めることになる。しかし、交際当初は病気のことを受け入れたように見えた彼だったが、交際を続けていくなかで彼女の病気が原因で、喧嘩をして距離を置くことになってしまう。つまり、彼女の病気を否定してしまったのだ。
彼女は持って産まれた障害により、夜にしか生活ができないのだが、交際してからは彼の望みで日中にデートをしようと試みる。しかし、彼女はどうしても起きられず寝坊してしまう。
その度、彼女は謝るのだ。したくてやった失敗ではないのに、自分の責任ではない失敗なのに、何度も繰り返し謝るのだ。
そんな彼女の気持ちが痛い。なぜなら、生まれ持った障害を否認されるということは、つまり自分自身を否定されるということだからだ。それでも謝るしかない彼女の胸の内を考えるだけで、苦しくなる話だ。
とくに、彼女自身はこれまでも人間関係において何度も同じ経験をしている。もはや、いわゆる「普通の生活」を送る人たちに否定され続けることに慣れてしまっているのだ。そう考えるだけで彼女のツラさが胸に突き刺さる。
そうした、身近な人の障害と向き合うことは簡単なことではない。私自身も親友が病で倒れて、意識が戻らなくなってしまったことで、とても苦しい思いをした経験がある。受け入れて立ち直るには、それなりの時間がかかった。
これは何も他人事ではない。例えば、自分の家族や子供が大きな病気や偏見のある病気になってしまう可能性は十分にある。しかし、受け入れるのは難しいのだ。
精神科医であるキューブラー・ロスの著書『死ぬ瞬間』では「死の受容のプロセス」があるという。その最初のステップが「否認」なのだ。誰もが初めは自分の死を受け入れられない。それは、家族やパートナーであっても同じなのだ。そして、それは死だけに限らず、あらゆる場面で当てはまるのだ。
例えば、自分の子供がメンタル疾患になった場合を仮定すると分かりやすいだろう。自身の育て方が悪かったせいだと認めたくない心理が働き、余計に否認が強まってしまうのだ。
そのように近親者の病気の受容のステップを学べる作品が本作だ。ハッピーエンドなので、気持ちが滅入らずに見ることができるだろう。オススメだ。