「樺沢紫苑作品」を徹底分析!これはビジネス書界の『ONE PIECE』だ

書評

ビジネス書界の『ONE PIECE』。それが「樺沢紫苑作品」である。

そう気づいたのは『もしも社畜ゾンビが『アウトプット大全』を読んだら』読んでからでした。こちらの作品は、すでにシリーズ累計「90万部」の大ベストセラー『アウトプット大全』のコミカライズ版です。

本書を読んで、気づいたのは「アウトプットをすると幸せになれる」ということです。

主人公の健は、インプット中心のアウトプット不足。何もかもがうまくいかない日々を送っています。「どこにでもいる会社員」です。その彼が、アウトプットをすることで変化していきます。

自分の不調に気づくことで、健康の大切さに気づきます。そして次第に、チームで仕事をこなすようになり、仲間の存在に気づきます。すでにあった、人とのつながりの大切さに気づくのです。最終的に、新規事業のプレゼンを成功させることで、物事に挑戦し達成していくことの大切さに気づきます。

これは、2021年出版の『3つの幸福』の「幸福の定義」に当てはまります。健康(=セロトニン的幸福)、人のつながり(=オキシトシン的幸福)、成功(=ドーパミン的幸福)です。さらにいえば、ムダなアウトプットをしないことは「受け流す技術」であり、必要なアウトプットをすることは「ガス抜き」でありますから、こちらも2020年出版の『ストレスフリー超大全』のノウハウに当てはまります。『ストレスフリー超大全』は心理的に心の健康へアプローチしたものです。

そして『ストレスフリー超大全』と同時期に発売された『ブレインメンタル強化大全』は、健康の基盤となるセロトニン的幸福を盤石なものとするノウハウ「睡眠・運動・朝散歩」について徹底的に解説されたものです。こちらは身体的に心の健康へアプローチしたものです。つまりは、ここまで全てつながっています。

さらに細かく考えていくと、『アウトプット大全』の前身は、2015年出版の『読んだら忘れない読書術』です。『読んだら忘れない読書術』のコンセプトは「読書術」ではなく「健康」です。なぜなら、読書により「正しい知識」を得れば「病気の予防」になるからです。

そのエッセンスは、『読んだら忘れない読書術』に豊富に散りばめられています。

読書で「ビジネスノウハウ」を学ぶことは「時短」になる。時短になれば、残業が減る。残業が減れば、自由時間が増える。そうすれば、ストレスが減り、睡眠時間が増える。そして、パフォーマンスが上がり、収入も上がる。結果として「健康」が手に入るということです。

そこから「時間術」に絞って書かれた本が『神・時間術』です。『神・時間術』は、単なる時間を効率的に使うためのノウハウ本ではなく、これまた「健康」の本なのです。なぜなら、『神・時間術』の基本となるのは、7時間以上の睡眠だからです。よく眠ったうえで、「脳のゴールデンタイム」と言われる「朝の最も集中力の高い時間帯」に、最も骨太な仕事をすることで、普通の人の3倍以上のパフォーマンスを発揮できるという内容だからです。

『神・時間術』の前身となっているのは、『毎日90分でメール・ネット・SNSをすべて終わらせる99のシンプルな方法』であり、さらに遡ると『Gmail仕事術』でしょうから、全てつながっていきます。

こうして1冊1冊の分析をしていくと、さらに見えた気づきがあります。それは「一貫性のある発信」です。

この「一貫性」という言葉。どこかで目にしたと思えば、2020年出版の『父滅の刃』です。こちらは「父性」について触れた1冊です。これも2012年の『父親はどこへ消えたか』のリメイク版ですから、そこからつながっています。そして、その「父性」というテーマは、さらに派生して2021年にKindleにて出版された『エヴァンゲリオンの心理学』にもつながっていきます。

そうした、これまでのつながりを示すのが2021年出版の『行動最適化大全』だったのです。マンガ『ONE PIECE』でいえば、これまでの作品1つ1つは「ポーネグリフ」です。そして、それをつなぐ「リオ・ポーネグリフ」が『行動最適化大全』なのです。

つまりは、樺沢紫苑作品は「ひとつなぎの大秘宝」だったのです。そして、そこから見えた答えは「情報発信によりメンタル疾患の予防をする」という樺沢紫苑先生のビジョンだったのです。

これが全てを支える根幹です。

私は、マンガや映画が大好きです。それは「伏線」を拾っていき、最後に全てつながるオチが見えたときに、なんとも言えない恍惚感が生まれるからです。しかし、「ビジネス書」でそんなことはありえません。ありえないはずなのですが、ありえてしまっているのです。

こんなに熱狂できるビジネス書を私は他に知りません。本当に最高の作品集だと思います。ぜひ、みなさんも「ひとつなぎの大秘宝」に至るまでの、道筋をご自身の目でチェックされてみてください。