『真の「安定」を手に入れる シン・サラリーマン──名著300冊から導き出した人生100年時代の攻略法 』(サラタメ/ダイヤモンド社)書評

書評

そうか。「バランス感」が重要だったのか。そう気づかせてくれたのが、YouTuberサラタメさんの『シン・サラリーマン』だ。

6年前のサラタメさんは、ブラック企業に就職し、理想と現実とのギャップに打ちのめされたそうだ。そこで「本」に救いを求め、300冊を読んだ結果、いまでは「YouTuber」としても「作家」としても成功している。

6年で圧倒的な結果を出した背景には何があるのか。それが、この『シン・サラリーマン』には書かれている。

6年前の私は、会社を辞めて「プロマジシャン」として活動していた。22歳の頃だ。私も、会社員時代に、理想と現実のギャップから「本」に救いを求めた1人だ。偏差値40そこそこの工業高校卒という「学歴コンプレックス」も相まって、19歳から20歳にかけては「300冊以上」の読書をした。しかし、著者のような結果は出ていない。

その理由が「バランス感」にあると思う。

私が読書をしていた頃は、空前のインプットブームで「速読・多読」がもてはやされていた。できるだけ早く、たくさん読んだほうが賢いというわけだ。

そのなかで「ビジネス名著100選」などもあった。だが、それは単なる「要約」にすぎず、また次の本を読むだけになってしまった。つまり、私はただ本を読むばかりで、あまり結果につなげることができなかった。

しかし、この『シン・サラリーマン』は違う。著者が使いこなしてきた「名著300冊以上」の知識を、「会社員」のために体系立てて教えてくれる。300ページを超す本書だが、主人公と著者の「会話形式」で内容が進むため、とても「易しい」。さらに、主人公の悩みに寄り添うようにかかれているため「優しさ」もあるのだ。

本書は、どう役立てればいいかが明確なのだ。だからこそ、著者は私と違って大きな結果を出しているのだとわかる。

さて、本書の根幹となるのが「リーマン力」「副業力」「マネー力」の3つだ。「リーマン力」は、何をするにも役立つ仕事術。「副業力」は、自分で稼ぐ力。「マネー力」は、稼いだお金を守る力。がそれぞれ解説されている。これが「バランス感」だ。

会社の業務を覚えるのは、誰もがやることだ。一方で「リーマン力(仕事術)」は、多くの人が学びすらしない。つまり、これを知っているかいないかで、大きな差がつくのだ。なぜなら、今の職場であっても、転職をするにしても、副業を始めるにしても、どこでも役立つスキルだからだ。

また、会社の収入だけに頼っていては、会社が潰れたときには途方に暮れてしまう。コロナ禍で、そうした苦虫を噛み潰すような体験をした人は多いことだろう。もちろん、今もなお苦しんでいる人もいるだろう。しかし、「副業力」を身につけていれば、会社が潰れたとしても、自分自身で稼いでいくことができるので安心だ。

もし今のあなたが、安定した職につき、副業で稼いでいたとしても、湯水のようにお金を使っていては、いつか破産してしまう。もしくは、いつまで経っても「自転車操業」のままだろう。それも「マネー力」を学ぶことで解決できる。

こうして、すべてを実践して「バランス感」のある人が、いち早く成功していくのだろうと思った。

とくに、私に不足しているのは「マネー力」だろうと思う。ハッキリ言って、お金には無頓着だ。会社員時代には、とにかく「自己投資」だと言って、「スーツ」をたくさん買ったり、「書籍代」にかなりのお金を費やした。その頃は「プロマジシャン」を目指していたこともあって、マジックの「講習」や「教材」にもお金を使っていた。

ここで「マネー力」を学んで「バランス感」を持っていれば、いくらかお金も残っていただろう。しかし、「マネー力」のなかった私が「プロマジシャン」になった頃は「無一文」だった。

6年前の私が「リーマン力・副業力・マネー力」の「バランス感」を備えていれば、大きく結果は変わっただろう。だからこそ、いまの私は「マネー力」について、しっかりと学んでいるところだ。

なので、これから「独立・起業・副業」を考える人には、手放しで本書をオススメしたい。私の経験から「絶対に失敗がない1冊」と言い切れる。とくに働き盛りの30〜40代は、「子育て」など家庭のことでも忙しいはずだ。そして、大量の本にかけるお金もないはずだ。

だからこそ、この1冊で多くをまかなってほしい。

最後に、いまの私は「10年前の読書が効いてきたな」と思っている。よく見聞きする「読書による自己投資は10年後に返ってくる」は、その通りだとも思う。しかし、この『シン・サラリーマン』は「即効性」が高いと断言できる。たくさんの読書をしてきたからこそわかる。とくに「転職」を考えている人は、1年で人生が大きく変わってしまうかもしれない。

本当に、贅沢な1冊だ。