『ざんねんないきもの事典』書評(今泉忠明監修/高橋書店)

書評

生物の進化とは、不思議なものだ。例えば、哺乳類で口呼吸ができるのは人間だけなのだが、この差が話せるかどうかの大きな違いになっている。実際、チンパンジーは人の言葉を理解しており、手話を通してコミュニケーションも取れる。しかし、口呼吸ができないために話すことはできないのだ。

こうした生物の進化について、教えてくれる1冊が本書だ。

他にも馴染みのある動物の意外な事実を知ることができて、おもしろい。そして、本書を読み進めれば分かるのだが、人間以外の生物がどれだけ繁殖のためにスゴく必死だということがよく分かる。

クワガタはアゴを大きいほうがモテるのだが、実際は木のくぼみに頭が入らず蜜を吸いづらくなる。孔雀はモテるために色鮮やかな羽を伸ばすが、大きすぎて風が吹くだけで倒れる。ミツクリエナガチョウチンアンコウのオスに至っては、自分の何倍も大きいメスに噛みついて交尾を行うと、そのままメスの体と皮ふや体がくっついてしまって、メスのイボとなって生涯を終える。

もはや、命がけで交尾をするのだ。カマキリのオスもメスが食べてしまい出産するための養分になることが多いという。

このように、繁殖という側面からだけでも十分に楽しめるのが本書だ。生物の進化の歴史を考えながら読み解くのも良し、人間以外の生物のおもしろおかしなところをただ知るだけでも良し、それを雑談のタネにするのも良し。といったような大変たのしめる1冊だった。