「キングダム展」感想

日記

「命を吹き込む仕事」には感動する。私が愛読しているマンガ『キングダム』(原泰久/週刊ヤングジャンプ)その原画などの展示会「キングダム展」が福岡市美術館で行われていた。

私は10年以上マジシャンとして活動してきた経験がある。そこで感じるのは作品づくりの大変さだ。ひとつのマジックを行うにしても、セリフやストーリー構成、手の動きや表情、道具の扱い、それぞれ細部までに神経を使う。つまり、魂が削られる思いをする。

では、その削られた魂は、どこに行くのか?

そう考えると、やはり作品に宿るという考えに行き着く。

まさしく、それを体感できる場所が「キングダム展」だった。キングダムには多くのキャラクターが登場するのだが、誰を見ても魂が宿っているように感じるのだ。目には光が宿り、体には躍動感がある。ただ絵を見ているだけのはずが、圧倒されて後退りしそうなほどだ。(実際には前のめりになって原画を見たのだがw)

とくに、展示会用に書き下ろされた作品には「熱」を感じた。

おそらく、全てのキングダムファンが愛しているキャラクター「王騎将軍」の描き下ろし作品は半端ではなかった。その大きさはもちろんのこと、天下の大将軍である堂々たる姿とその神々しさたるや、通りかかるものを跪かせる力があった。

この展示会に向けての準備は1年にも及んだそうだ。

それだけ綿密に、どの原画をどの順番で展示するのか、練られている。また、展示会用に書き下ろされた作品は、王騎将軍以外にもたくさんあった。その1枚1枚には、魂が込められているので、それだけの時間をかける必要があったのだと思う。

正直にいうと、私はマジックを演じることで魂をすり減らし続けて、演じることへの意欲を失ってしまった一人だ。自分の納得いく作品をつくることの大変さを身にしみて知っている。

しかし、キングダムの作者である原泰久さんは見事にそれを成し遂げているように見える。なので、深く感心するとともに、圧倒されてしまうのだ。

こうして原画展を観たことで、作品づくりに向けられる情熱や気迫、また執念とも言える姿勢を感じ取ることができて、自分自身の今後に繋げたいと勇気づけられた次第である。